のんびりと起きて、ロッジの庭で朝の日差しを浴びながら朝ごはんを食べる。
昨日清里のパン工房で買った300円のクリームパンは、それはもう美味しくて、たちどころに幸福感に包まれる。
ついでにさくらんぼをつまんだり、スープパスタを食べる。
白樺の林は光を受けてとても明るくて、周りには誰もいなくて、「この広い世界に私たちだけ」のシチュエーションはなんとも言えない優越感と幸福感を与えてくれる。
地面に目を落とすと芝の間にはたくさんのアリがいて、僕が落としたパンのかけらを熱心に運んでいた。
お世話になったロッジに挨拶して、乗鞍を出発する。
次は甲府の昇仙峡、影絵美術館に向かうのだ。
道すがらいろいろな話を相棒とする。
車を運転しているときというのは色んな話がしやすい環境が整っているのだ、実は。
ひとつ。
密閉された空間であること。誰にも邪魔されない。自分たち以外に話を聞かれることがない。
ふたつ。お互いに前を向いていて、話に詰まっても景色が動いているから圧迫感がない。ドライブ・カウンセリングというスタイルを確立させたいくらいの好環境なんだよな。
影絵美術館はわりとワイルドな美術館であった。
そこで働いている方たちはひとことで言ってしまえば「おばちゃん」なのだ。
ちょうど僕らが訪れたときは、山下清展(うん。あの山下清だ。)水木しげる展(漫画は文化だもんね。)そしてなぜか内海圭子展(圭子師匠が絵を嗜まれるなんて知りませんでした。)
去年の夏、圭子師匠が浅草の寿司屋通りを歩かれているのを目撃しただけに、この展開は衝撃的である。