相棒は隣のテントの物音と、雨がテントを叩く音と、ムスメの夜中の攻撃によってあまり眠れなかったらしい。
おかげさまで僕はぐっすり眠ることができて、二度寝を楽しみ8時にテントを出る。しんのすけ特製の鶏粥は底をついていたので、昨日自分で作ったシチューをすする。
子どもたちは朝から元気いっぱいで、好きなようにそこらへんを転げまわっている。いいぞやれやれ、と思う。
ムスメよ、歩けるようになったらああやって友だちと野っぱらを転げまわるのだよ。父ちゃんは何もしてやれないけれど、いっしょに遊ぶことはできるからね。
キャンプ場にお風呂はあるものの、面倒くさくて入らなかった僕たちは、近場の温泉に向かうことにする。これまたムスメにとっては初の共同浴場体験である。変換ミスで協働欲情体験と出たがこれはまだ早すぎるのである。
当然僕が男湯にムスメといっしょに入ることになる。まあ、相棒に「オレイレタイオレイレタイ」と目で訴えたんですけれどね。
ムスメはしっかりと僕にしがみついて(猿が親猿にしがみついているかのごとく)、良い子で洗い場に座る。泡まみれにしたあと、シャワーで流し浴槽へ。となりではしんのすけとこたろうが仲良くぶらぶらさせている。
ちょうど良いお湯に浸かると、ムスメは息を呑み暴れだす。どうやら深いことが怖いようで、ひたすら僕を登ろうとする。そこで耳元で「ふうちゃん、これは温泉と言って非常に体にいいものなんだよ。一見深いように見えるけど、実際はそんなに深くない。あの壁の向こうには母ちゃんがいるし、父ちゃんがしっかり抱っこしているから大丈夫だよ。」と囁いてあげると、おとなしく僕にしがみついた。
お風呂から上がり、いっしょに行った中山さんにムスメの体を拭いてもらいつつ僕もあわてて服を着る。お互い若い父親だから、何が大変かポイントがわかっているのだ。
大広間で相棒と合流し、他の家族とも合流する。大広間は「宴会場」であり、そこには1曲100円のカラオケがしつらえてある。地元の方だろうか、おじさんやおばさんがステージに立ち気持ち良さそうにこぶしをまわしていた。
僕たちは最前列に陣取り、曲が終わるたびに拍手をしてあげる。子どもたち(0歳から4歳くらいまで)は口をぽかんと開けながらその様子を見つめ、曲が終わると申し訳程度に拍手をしていた。
道の駅で昼食を取り、キャンプ場へ戻る。おやつ代わりにそうめん&納豆そうめんを作り、けんさんに好評をいただく。2日目から合流する家族が加わり、いよいよ大所帯に。
そうめんを食べながらモツのジンギスカン風味をつついていると、ブヨにやられてしまった。左足首。
痛いなあと思いつつ、相棒とムスメと「動物ふれあい広場」で山羊と孔雀をからかっていると右上腕部。
僕は体質的に虫に刺されると腫れる。蚊は、慣れた。何十箇所刺されようとも、かゆいなくそ、と感じるくらいである。
が、ブヨは違う。刺された場所を中心に半径20センチくらいが腫れ上がる。刺された直後はまず悪寒がする。リンパ節が痛む。やがて真っ赤に腫れ上がる。
リンパは鼓動とともに痛みを体に送り、少し胃の辺りが重くなってくる。関節そのものが痛み始め、痒いというよりもぼってりと痛い。
とは言いつつも、薬を塗れば治る類のものではないので放っておくのだ。
夕方、天気予報をチェックしキャンプ場近辺の天気図を見る。雨が降りそうだ。
一足早く撤収を始めて、参加している皆さんにもお天気予報を伝える。霧のような雨にムスメを晒すのも負担なので、一足先に我が家族はテントに向かう。
夜更け、ムスメの動きで目が覚める。なにやらいつもと違う感じがする。抱き上げてみるととても熱い。体にあまり力が入っていない。相棒も目を覚ましてとりあえずおっぱいを与えてみる。
体の熱さが普通ではないので、体温を測ると38度5分。間違いなく、何かしらの異常がムスメの体に起きている。
さて、ここで僕の頭はフル回転する。時間は明け方の4時30分。撤収はテントとタープだけ。帰るか、残るか。3連休の最終日。台風が近づいている。ムスメは発熱、相棒は寝不足。
帰ろう。そう決めて片付けに入る。まだ暗い空の下、ヘッドライトを点けてタープを片付ける。相棒とムスメを車に移動させ(そうするうちにもムスメはどんどん熱くなる)、東の空が白み始める頃、ほぼすべての撤収が終わる。
ちょうどしんのすけも起きてきて、出来事を伝えて皆への伝言を託す。しんのすけが早起きで良かった。
相棒とムスメを載せて、車は帰路につく。朝の沼田は濃い霧に包まれていながらも、うわさの看板を目にしながらAKIRAは帰るのであった。
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