(すべての写真:長尾彰)
いつものように国道398号を湊地区に向かう。路上の泥、歩道の廃棄物は片付けられていて、写真のような大型の重機も入れるようになってきた。主要幹線道路以外の片付けはまだまだ進んでおらず、このような大型の重機の活躍が大いに期待される。
石巻市に入った時間帯は、ちょうど満潮時だったのか冠水が目立つ。この場所で最深50センチ程度。淡水ではなく泥混じりの海水なので、車が傷んでしまう。この冠水した場所を、車だけではなく自転車の若者も徒歩のお年寄りもじゃぶじゃぶと乗り越えていく。
石巻市立門脇小学校。石巻市は4月21日に始業を迎えた。門脇小学校の職員室は門脇中学校に仮設されている。石巻市内に計70ある幼稚園・小・中・高等学校のうち、被害が無かったのは20校のみ。50校は何かしらの被害を受け、8校は全施設が被害を受けた(石巻市教委3月29日発表)。このような状況は石巻に限らず、女川・南三陸・気仙沼・大船渡など三陸海岸沿いで同じように見られることだろう。課題は山積だ。
登校する少年の後ろ姿。何を感じながら・考えながら歩いているのだろうか。
今回の同行メンバーのひとり、IBMラグビーフットボールチームに所属するプロのラガーマン、西山淳哉さん。午前中は湊水産の清掃作業を手伝う。泥と水垢にまみれた店舗と工場敷地内に建てられた木村社長のお宅の泥かき。西山さんはラガーマンらしく、土のうにこれでもかと詰め込まれた水をたっぷり含んだヘドロを軽々と運んでくれた。
窓ガラス、空いている部分は「空けてある」のではなく津波で割れてしまった部分。この窓を遥かに超える津波に襲われた。湊水産がある湊地区は、3日前から水道が復旧した。高圧洗浄機を使って、水洗いをしながら窓にこびりついた水垢をこすり落とす。「水が出る」というだけで、片付けがとてもスムーズに進む。
壁の泥を落とすのはJICAシリアで新体操を教える浅見早登子さん。西山さんにしても、浅見さんにしても、「私はいったい何をしたらいいのかしら?」という受身な姿勢ではなく、「自分で考えてできることをどんどんやる」という姿勢がとても気持ちがいい。作業を割り振られたとしても不満を述べることなく、淡々とやり遂げてくれます。
作業を初めて3時間。先々週、先週の湊水産とは見違えるような状態です。ただし、見えない場所(店舗の裏側や土台部分)などには、ぎっしりとヘドロが詰まっています。流しても流してもヘドロがあらわれる。写真中央でガラスの仕上がり具合を覗き込んでいるのは、楽天大学学長の仲山進也さん。
湊水産の木村社長は、4月2日に訪れた時から、一刻も早く商売を再開させることを口にされていた。連休明けには本格的に再開するそうだ。加工場では従業員の方々が黙々と洗浄作業にあたっていた。連休前に消毒作業を終え、連休中にたらこの漬け込みを始めるとのこと。湊地区には複数の水産加工場があるが、まだ再開の目処はたっていないし片付けも十分に進んでいない中、湊水産の動きは異例だ。元気がある人が元気のある人をもっと元気にする。木村社長は「お上に頼んだって何にも変わんないからよー、大借金しちまったけんど、どうにかなるっぺよー。」と豪快に笑う。
加工上の裏手、資材倉庫は倒壊してしまった。フォークリフトやユニックは浸水し壊れてしまった。知人から借りたというフォークリフトを上手に使って、倒壊した倉庫の片付けをする営業部長。
約2メートル浸かった工場の中。泥は丁寧に掃き出されていて、後は消毒を待つ。新しい漬け込み用の容器もたくさん届いていた。
湊水産に面した通りは、廃棄物の一時投棄場所になっているため、大型の車がひっきりなしに行き交う。米軍の大型トラックが浄化槽を載せて移動していく。自衛隊の車が先導し、消防の車がしんがりをつとめる。思わず米兵に手を振ると、若い女性の兵士が手を振り返してくれる。「お互い頑張ろうぜ」といった笑顔を浮かべながら。
午後は石巻市立蛇田小学校で、石巻こども避難所クラブの活動。まずは教室で顔合わせ。蛇田小学校の地区は比較的被害は軽微なので、避難所から来る子どもと自宅から来る子ども、両方が放課後活動に参加している。10人ほどの小学生、子ども避難所クラブのボランティアスタッフ(虹色クレヨン、と呼んでいます)は高校生が3人、社会人1名(カナブー、蛇田在住の元気な女性)で運営。
(写真は修正を加えています)
まずは集まって始めの会。子どもたちは元気いっぱい。体ごとぶつかってくる。
ふと外に目を向けると、校庭には桜の花が。子どもたちがおしゃべりしながらブランコに揺られている。子どもの笑顔、歓声。それぞれが色々なことを感じながら、季節が変わっていく。この地区は被害が軽微だったので、南三陸のベイサイドアリーナや、女川の志津川高校とは子どもたちの雰囲気も学校の雰囲気もずいぶん和らいだ感じがする。
西山選手によるラグビー教室、もとい、鬼ごっこ。僕がアスリートが好きなのは、「声」が出ること。「さあやるぞー。」「集まれー。」「よーい、どん!」大きな声が谺する。その声は確かで力強いので、子どもたちも大人たちも安心してノッてくる。運動が苦手な子どもたちはジャングルジムに登ったりシーソーに腰掛けてこの様子を眺めている。今回の同行者には、プロジェクト結の賛同団体で理事でもある日本臨床心理カウンセリング協会の園田さんもいるので、そんな子どもたちのそばに寄り添ってもらう。
「心のケア」という言葉が震災以降、あちこちで聞かれる。
でも、「心のケア」が具体的に何を指すのかはあまり明らかにされていないし、そのガイドラインも抽象的だ。
「子どもたちに心のケアが必要だ」
「大人にも心のケアが必要だ」
「現地で活動したボランティアにも心のケアが必要だ」
つまり、「心のケア」とは「私」の他者に対する関わり方のことを指すのだと思う。
「心のケア」は誰がするわけでもない、「私自身」の他者に対する姿勢と関わり方の問題なのだ。
「心のケア」はカウンセラーがすることもあるけれど、実はそうではなくて、「私が他者と(特に被災した人たちと)どのように関わるか」ということそのものなのだ。
そして、「被災した人」は「わたし」も含めて「被災した人」なのです。
今回、石巻の子どもたちや大人たちと接していて感じたことは、「寄り添うこと」「言葉を選ぶこと」
「助けてあげよう」「ケアしてあげよう」なんて思わなくていいから、「いっしょにいよう」ということをどれだけ伝えてあげられるか。
道路の脇に積み上げられている流されてしまったものを、「瓦礫」と呼ぶのか、「流されてしまった物」と呼ぶのか。
「ボランティア」と呼ぶのか、「お手伝い」と呼ぶのか、些細な言葉使いの違いに気を配ることだけで、相手には十分に「心のケア」が届くのではないかと思っている。
もちろん、それが全てではないし、カウンセラーやセラピストの考えも参考にはするけれど。
石巻市は4月21日の始業に併せて、市内に28ある放課後児童クラブを再開させた。渡波地区や湊地区、門脇地区など被害が甚大な地域は連休明けの再開。今後はこういった公設の放課後児童クラブとも連携を進める必要がある。これまでの仕組みだと、公設の放課後児童クラブは有償で利用条件が限られている。3年生以上の子どもたちの居場所も確保したい。
(写真には修正を加えてあります)
浅見さんや西山さんのようなアスリートたちが継続して活動をさぽーとしてもらえるような仕組みも作りたい。身体を動かすことには、理屈なんていらない。リボンをくるくるまわすだけで、男子も(柴田さんも(笑))「おぉーっ!」っとなる。
今回はアスリートソサエティでも活動する西山さんや、浅見さんのキャラクターがとても心地良かった。なんというか、自分で考えて自分で行動できて自分で発信できる人たちなのだ。僕自身が体育会系だからかもしれないが。自分たちで「楽しみ方」を見つけることができて、大きな声を出しながら楽しそうに事に当たることができる。少しぐらい大変なことがあっても愚痴を言わずに、自分で疲れたタイミングを見計らって器用に休憩をとる。そういう大人の姿を見せるだけ、あるいは一緒に遊ぶだけでも子どもたちにずいぶん元気を与えられるのではないかと思いました。にしやん、トコ、ありがとう。
変わらず私設避難所になっている湊水産の3階。3月の終わり、山形県天童と鶴岡に送った計50㌧のおもちゃの一部が、石巻にも届いていた。嬉しい。
今週の湊水産。ガラスはぴかぴかになった。木製の什器はまだ完全に綺麗とは言えないけれど、これからワックスを塗れば綺麗になっていくでしょう。黄色いのは今回大活躍してくれた高圧洗浄機。「洗車の王国」の相原社長から計3台の提供をいただいた。ヒロシ、ありがとう。とっても役にたちました。そして木村さんからリクエストがあった意外なもの、「ウォシュレットの便座」はピカドールの田所社長のカンパを充当させていただきました。アツシ、ありがとう。
次回は5月5日~7日で石巻・女川・南三陸町で活動をします。
引き続きの御支援をよろしくお願いします。
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