家族でショッピングモールを歩いていた。
ムスメはベビーカーに乗ってうきうき、相棒はウィンドウショッピングにうきうき、僕は久しぶりの家族の時間にうきうき。
知らない女性に声をかけられる。「ちょっとよろしいですか?」
何事かと振り返れば子ども専門の芸能プロダクションのスカウト。「おお、さすがわがムスメ!」と喜ぶこと4秒、5秒目には頭に警戒信号が鳴る。
話を聞けば、スカウトと言うよりも、勧誘であった。後日電話をもらって詳細を、とのことでその場はいったん終わる。
そして僕らは考える。結論は考えるまでもなく出ているんだけど。
「お子様の記念に、登録してみてはどうですか?」という言葉がとても引っかかっている。
「お子様の記念じゃなかろうよ、親の記念だろうよ。」と思う。だってお子様なんにもわかっていないからだ。記念だろうとモデルだろうとゲーノーカイだろうと、ムスメには一切関係ない。彼女は今、クウ・ネル・アソブにひたすら忙しいのだ。
もうひとつ考える。僕らのムスメはまったく知らない人から「カワイイ」と思われている。それはそれでバカ親としては大変嬉しいことです。
がしかし、「まったく知らない人が僕らのムスメを『カワイイモノ』として見ている」という客観的な事実があることに、とても怖さを覚えた。
今までムスメは僕の家族という世界で生きてきた。世界を広げても僕の友人たちを取り巻く世界で、だ。
でも現実はそうではなかったらしい。僕らの世界に外の世界が無理やり入り込んできたように思えて、怖い。
じゃあムスメを僕らの世界から出さなかったとしたら、僕はバカ親の何者以外でもなくなってしまう。
守ってあげなければならないけれど、自分で自分の心身を守れるムスメに育てるのだ、僕らは。
しかし腹立たしいのは、スカウトの女性が「お父様は芸人さんですか?」と真顔で尋ねたことだ。
オレは芸人じゃねー。ファシリテーターだ!